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金持ち大国や多国籍企業の都合で貸し付けられた途上国債務の帳消しを! 債務、世銀・IMF、ODA、南北問題など、翻訳モノを中心にテキトーにupします。

2024-04

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フランスのクォリティ・ペーパー「ル・モンド」の関連会社が編集する国際月刊紙「ル・モンド・ディプロマティーク」の日本語版の編集責任をされているSさんから訳語についていろいろ教えていただきました。ありがとうございました!

「ル・モンド・ディプロマティーク」にはときどきエリックさんたちの論考も載ります。それ以外にも政治、経済、軍事など、私たちがなかなか知ることのできないフランス語圏の識者の意見を知ることができます。ぜひ、覗いて見てください!メールマガジンもあり。 http://www.diplo.jp/

←ということで、ここまでは前振です。
↓ここからが本番・・。

金融界は救われる、人権を踏み台に

エリック・トゥーサン、ダミアン・ミレー(CADTM)
2008年4月16日

原文:Bankers saved, human rights sacrificed
http://www.cadtm.org/spip.php?article3275

一見、何の脈絡もない数値が、ときに見事な偶然を示すことがある。新自由主義グローバリゼーションの忠実な僕(しもべ)たちが操る影絵芝居の後ろにある暴力的な現実が、二つの統計を通じて図らずもその弱点を顕(あらわ)にした。

かたや金持ち諸国によるODA(政府開発援助)実施額。2007年は1000億ドルだった。経済協力開発機構(OECD)によると、その額は正確には1037億ドルで、前年比8.4%の減少だった。この減少傾向は注目に値する。国際協力の口約束などちっとも守られていないことが一目瞭然だからだ。

G8サミットを構成する8つの頂(いただき)のひとつたりとも、結局はODA増額、特にもっとも貧困にさらされているアフリカへの援助増額の約束を果たしていない。1970年以降、金持ち国はODAを国民総所得(GNI)の0.7%に増やすという約束を繰り返してきた。この約束を果たしたのはわずか5カ国、ノルウェー、スウェーデン、ルクセンブルク、デンマーク、オランダだけである。最もひどいのは米国で、その数値はGNIのわずか0.16%である。

金持ち国が自分たちの援助額の少なさをごまかすためにあれこれ統計操作を施しても、ODA額は世界全体でGNIの0.28%にしかならない。金持ち国からの「ODA」には、債務救済、米国が自ら破壊したイラクやアフガニスタンの復興に費やす金、北に留学した南の学生の授業料、ドナー国の利益を擁護し、費用がかかるくせに役にも立たないレポートを書くのが仕事の海外駐在員や多くのコンサルタントを雇う金など、とんでもないものが含まれている(注1)・・・。それ以上に許しがたいのは、援助の多くが南の国々の本当の必要性にまったく関係なく、ドナー国にとって地政学的に重要な国に向けられることである。米国の援助の受益者は、イラクとアフガニスタンを別にすれば、スーダン、コロンビア、そしてどこよりもイスラエルである。

2005年、グレンイーグルス(スコットランド)サミットで出された公約(コミットメント)ははっきりこう謳っている。「ODA額の大幅な増加、とりわけ、アフリカ向け援助の2010年までの倍増」。OECDによると、これは「ODA額を2004年の800億ドルから、2010年には1300億ドルへと引き上げる(2004年価格で)」ことを意味する。

結果に対する「評決」は明快だ。「何よりほとんどのドナーは自らが公約した援助量の増大に追いついていない。援助国が自ら設定した2010年目標に到達するには、前例のない援助増額を行わなければならないだろう(注2)」。つまり「目標達成は無理」ということである。事実、過去40年近くにわたって、G8のリーダーたちは自らの公約を裏切り続けてきた・・・。

かたや国際通貨基金(IMF)のレポートである。それによると2007年夏に浮上したいわゆる「サブプライム」問題による現在の国際危機のコストは今のところ約1兆ドルと見られているが、損害はさらに広がる可能性もあるという。4月8日に発表されたレポートの中で、IMFは国際金融システムに降りかかるコストはより正確には9450億ドルであり、そのうち5650億ドルがこのハイリスクの住宅ローンシステムに直接関係する分だと見ている。

事の次第はこうである。自らの流動性資産を使ってさらに大もうけしようと、ローン会社は中産階級・貧困層の中のすでに借金で首まで浸かっている人たちを相手に住宅ローンを貸し付けた。お客の気を引くために最初の二年間は中程度の固定金利にしておくが、三年目から金利は急速に跳ね上がる。ローン会社は借り手に「不動産マーケットが上げ潮だから、あなたたちが買おうとしている物件(これは同時に借金の担保でもある)はすぐに値段が急騰しますよ」と言ってお客に圧力をかける。2007年、不動産バブルがはじけた。危機は複雑怪奇な金融商品を作り出し膨大な帳簿外取引を行っていた金融業界のあちこちに飛び火した。

西側諸国の財務大臣たちはIMFの発表に対して、どれほど深刻な危機が起こっているか示すこと自体が危険な行為だ、とでも言いたげな反応を示した(注3)。北の国はどこでも、保守政権であろうが社会民主党政権であろうが、政府は新自由主義政策を採用し多数の市民の生活に犠牲を強いている。社会サービスは真っ先に厳しく切り詰められ、巨大資本の利益は見逃される一方で、貧困層により大きな影響を与える間接税(消費税)が引き上げられてきた。

窮乏する自国民には救いの手を差し伸べないこれらの政府が、今回の危機に際しては企業の利益救済のために迅速に立ち回った。以下、その「お品書き」である;立ちいかなくなった銀行の国有化、価値のなくなった有価証券の買取、資金投入、救済計画の立案、金利引き下げ・・・。

2000年、UNDP(国連開発計画)は毎年800億ドル、10年にわたってかければ、世界中の人たちにすべからく-そう!すべからく-安全な飲み水を行き渡らせ、子どもたちにきちんとした食事を与え、基礎教育の100%保障、婦人科を含む基礎的な保健医療を確保できるという試算を出している。要は総計8000億ドルを見つけられるかどうかだが、そんな資金はどこからも出てこず、何十億人もの人たちの生活状況は悪化の一途をたどった。アグロ燃料(バイオ燃料)増産が火をつけた食料価格の高騰は、アフリカ、ラテンアメリカ、アジアの何千万もの人々を更なる貧窮のふちに追いやりつつある。食料「暴動」がハイチ、エジプト、コートジボワール、セネガル、カメルーン、ブルキナファソで起こっているが、これはまだ序の口である。国連ミレニアム開発目標達成どころか(これ自体、生ぬるいものではあるが)、我々はその逆方向にまっしぐらに突き進んでいる。

国連が基本的な人権のいくつかを実現するのに8000億ドル必要だと提示している傍らで、現在の金融業界の危機救済に1兆ドルが必要だと騒いでいる。欠落しているのは資金ではなく、政治的な意志であることは明らかだ。これは世界人権その他の国際協定の重大な侵害にあたる。このようなこと許すことも認めることもできない。そして問題にされるべきは、このような経済モデルの理論そのものなのだ。

エリック・トゥーサン:第三世界債務廃絶委員会ベルギー代表、著作にThe World Bank : A Critical Primer, Pluto Press, London, Between The Lines, Toronto, David Philip, Cape Town, 2008、Who owes Who?, Zedbooks, London, 2004
ダミアン・ミレー:CADTMフランス渉外担当。Who owes Who?, Zedbooks, London, 2004の共著者。

[1] ‘Les faux-semblants de l’aide au développement ‘, ル・モンド ディプロマティーク2005年、7月
日本語訳:http://www.diplo.jp/articles05/0507-2.html

[2] OECD, プレスリリース, 4 April 2008
[3] Dépêche AFP, « Les pays riches reprochent au FMI son chiffrage trop sévère de la crise », 10 avril 2008.

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